オフィスや店舗などのテナントを退去する際には、賃貸借契約の内容に基づいて、室内を元の状態へ戻す原状回復工事が必要になります。
原状回復工事を依頼する際に、特に重要になるのが見積書の確認です。
見積金額だけを見て施工会社を選ぶと、工事開始後に追加費用が発生したり、必要な工事が含まれていなかったりする可能性があります。
また、オフィスビルや商業施設では、ビル指定業者によるB工事、夜間・休日施工、共用部の養生、廃材処分などが必要になる場合もあります。
そのため、見積書では、合計金額だけでなく、工事範囲、内訳、追加費用が発生する条件まで確認することが重要です。
この記事では、原状回復工事の見積もりで確認すべきポイントと、施工会社へ相談する際の注意点について分かりやすく解説します。
原状回復工事で見積確認が重要な理由
原状回復工事の費用は、テナントの広さだけで決まるものではありません。
入居中に設置した内装や設備、床や壁の状態、搬出経路、工事可能な時間帯などによって、必要な工事内容が変わります。
例えば、同じ広さのオフィスであっても、間仕切り壁や造作家具が多い場合は、解体や搬出にかかる費用が増えることがあります。
また、飲食店や美容室などでは、厨房設備、給排水設備、換気設備、ダクトなどの撤去が必要になる場合があります。
原状回復工事の見積もりでは、主に以下のような条件が費用へ影響します。
- ・テナントの面積
- ・内装や設備の状態
- ・撤去する什器や造作物の量
- ・床・壁・天井の補修範囲
- ・電気設備や空調設備の復旧範囲
- ・廃材の量と種類
- ・搬出経路やエレベーターの利用条件
- ・夜間・休日施工の有無
- ・ビル指定業者へ依頼する工事の有無
工事開始後のトラブルを防ぐためにも、現地調査を行い、必要な工事項目を整理したうえで、見積書を確認することが重要です。
見積書で確認すべき主な項目
原状回復工事の見積書では、合計金額だけでなく、どのような工事が含まれているかを確認しましょう。
特に、以下の項目を確認しておくことが重要です。
1.内装解体工事費
間仕切り壁、パーティション、造作家具、受付カウンター、什器などの撤去にかかる費用です。
撤去するものが多い場合は、解体費だけでなく、搬出費や廃材処分費も増えることがあります。
どの設備や造作物を撤去するのか、見積書に具体的に記載されているかを確認しましょう。
2.床・壁・天井の補修費
原状回復工事では、床材、壁紙、天井材などの撤去や張り替えが必要になる場合があります。
例えば、以下のような工事が含まれます。
- ・タイルカーペットの撤去や張り替え
- ・床材の撤去や補修
- ・壁紙・クロスの張り替え
- ・壁や天井の塗装
- ・下地の補修
- ・ビス穴やアンカー跡の補修
部分補修なのか、全面的な張り替えなのかによって、費用は変わります。
工事範囲が明確になっているかを確認しましょう。
3.電気設備・照明設備の工事費
入居中に追加した照明器具、コンセント、電源配線、LAN配線などの撤去や復旧が必要になる場合があります。
見積書では、以下のような項目を確認しましょう。
- ・照明器具の撤去や復旧
- ・コンセントの撤去や復旧
- ・電源配線の撤去
- ・電話配線・LAN配線の撤去
- ・床下配線や天井内配線の撤去
- ・分電盤や電源設備に関わる工事
電気設備に関わる工事は、ビル指定業者による施工が必要になる場合もあります。
4.空調設備・換気設備の工事費
空調設備や換気設備を追加・変更している場合は、撤去や復旧が必要になることがあります。
特に、店舗や飲食店では、換気扇、ダクト、厨房設備などの撤去範囲を確認しましょう。
空調設備や換気設備も、建物全体の設備管理に関わるため、指定業者による工事が必要になる場合があります。
5.給排水設備の工事費
飲食店、美容室、クリニックなどでは、給排水設備の撤去や復旧が必要になる場合があります。
例えば、以下のような設備が該当します。
- ・厨房の給排水設備
- ・シンクや手洗い設備
- ・シャンプー台
- ・トイレや洗面設備
- ・給湯設備
- ・配管や排水口
配管の撤去範囲や、どの状態まで復旧するのかを確認しましょう。
6.防災設備・消防設備の工事費
間仕切り壁や天井を変更している場合は、火災感知器、スプリンクラー、誘導灯などの移設や復旧が必要になることがあります。
主に確認しておきたい設備は、以下のとおりです。
- ・火災感知器
- ・スプリンクラー設備
- ・誘導灯
- ・非常用照明
- ・非常放送設備
- ・排煙設備
- ・防火扉・防火シャッター
消防設備に関わる工事では、専門業者による施工や、管理会社との調整が必要になる場合があります。
7.養生費
什器や廃材を搬出する際には、共用廊下、エレベーター、壁、床などを傷つけないように養生する必要があります。
見積書では、養生する範囲や期間を確認しましょう。
特に、百貨店や商業施設では、施設側が養生方法を細かく定めている場合があります。
8.搬出費・廃材処分費
解体した内装材、設備、什器などを搬出し、適切に処分するための費用です。
撤去するものが多い場合や、大型什器、重量物がある場合は、費用が増えることがあります。
廃材処分費が工事費に含まれているのか、別途費用になるのかを確認しましょう。
9.清掃費
原状回復工事の完了後には、室内や共用部の清掃が必要になります。
清掃の範囲が、テナント室内だけなのか、搬出に使用した共用廊下やエレベーターも含まれるのかを確認しましょう。
10.夜間・休日施工費
稼働中のオフィスビル、百貨店、商業施設などでは、営業時間外に工事を行う必要があります。
夜間や休日の施工では、通常の工事費に加えて、割増費用が発生する場合があります。
工事可能な時間帯を管理会社へ確認し、見積書へ反映されているかを確認しましょう。
11.諸経費
見積書には、諸経費として、現場管理費、運搬費、駐車場代などが計上される場合があります。
金額が一式で記載されている場合は、どのような費用が含まれているのかを確認しましょう。
追加費用が発生しやすいケース
現地調査を行っていても、工事開始後に初めて分かる状態があります。
追加費用が発生する可能性がある主なケースは、以下のとおりです。
- ・床材を撤去したあとに、下地の補修が必要になった
- ・天井内に撤去対象の配線が残っていた
- ・間仕切り壁の裏側に補修が必要な箇所があった
- ・給排水管の処理に追加工事が必要になった
- ・空調設備や換気設備の復旧範囲が広がった
- ・消防設備の移設や復旧が必要になった
- ・廃材の量が想定より多かった
- ・大型什器や重量物の搬出に追加作業が必要になった
- ・夜間や休日の作業が必要になった
- ・管理会社から追加の復旧工事を求められた
追加費用を完全に防ぐことが難しい場合もあります。
そのため、見積もりを確認する際は、追加費用が発生する可能性がある項目と、追加工事を行う際の確認方法を、事前に施工会社へ聞いておきましょう。
追加工事が必要になった場合に、テナント側の承認を得てから作業を進めるのかも確認しておくことが重要です。
B工事・指定業者の費用にも注意
オフィスビルや商業施設では、一部の工事を、ビル指定業者へ依頼する必要があります。
このような工事は、B工事として扱われる場合があります。
B工事とは、一般的に、テナント側が費用を負担し、ビルオーナーや管理会社が指定する施工会社へ依頼する工事です。
例えば、以下のような工事が、B工事として扱われることがあります。
- ・電気設備工事
- ・空調設備工事
- ・換気設備工事
- ・給排水設備工事
- ・防災設備工事
- ・火災感知器の移設・復旧
- ・スプリンクラー設備の移設・復旧
- ・共用部と接続する設備の撤去や復旧
ただし、B工事の範囲は物件によって異なります。
原状回復工事の見積もりを依頼する前に、管理会社へ工事区分表の有無を確認しましょう。
テナント側で施工会社を選べる工事と、指定業者へ依頼する工事を分けて整理することが重要です。
また、B工事の費用が別途発生する場合は、原状回復工事全体の予算へ含めて検討しましょう。
複数の見積もりを比較する際のポイント
原状回復工事では、複数の施工会社へ見積もりを依頼することもあります。
ただし、合計金額だけを比較しても、適切な判断ができるとは限りません。
見積もりを比較する際は、以下の点を確認しましょう。
- ・工事範囲が同じ条件になっているか
- ・撤去する設備や造作物が明確になっているか
- ・床・壁・天井の補修範囲が同じか
- ・養生費が含まれているか
- ・搬出費や廃材処分費が含まれているか
- ・清掃費が含まれているか
- ・夜間・休日施工費が含まれているか
- ・諸経費の内容が明確になっているか
- ・B工事や指定業者の費用が含まれているか
- ・追加費用が発生する条件が説明されているか
- ・工事期間や完了予定日が明確になっているか
見積もりごとに工事範囲が異なると、単純に金額だけを比較することはできません。
価格が低く見えても、必要な工事が含まれていなければ、工事開始後に追加費用が発生する可能性があります。
不明な項目がある場合は、そのままにせず、施工会社へ確認しましょう。
施工会社へ事前に確認しておきたいこと
見積もりを依頼する際は、金額だけでなく、工事の進め方や追加費用の考え方についても確認しましょう。
施工会社へ事前に確認しておきたい項目は、以下のとおりです。
- ・現地調査を行ったうえで見積もりを作成しているか
- ・原状回復工事の範囲をどのように判断しているか
- ・管理会社やオーナーとの調整に対応できるか
- ・工事申請書や作業届の準備に対応できるか
- ・B工事や指定業者が必要な工事を整理できるか
- ・追加費用が発生する可能性がある項目は何か
- ・追加工事を行う際に事前確認があるか
- ・夜間・休日施工に対応できるか
- ・搬出入や共用部の養生に対応できるか
- ・工事完了後の手直しに対応できるか
- ・引き渡し期限から逆算して工程を組めるか
説明が分かりやすく、工事範囲や費用について丁寧に回答してくれる施工会社であれば、工事開始後も相談しやすくなります。
見積もり依頼から工事開始までの流れ
原状回復工事の見積もり依頼から工事開始までは、一般的に以下のような流れで進めます。
- 賃貸借契約書や特約事項を確認する
- 管理会社やオーナーへ退去を連絡する
- 原状回復工事の範囲を確認する
- A工事・B工事・C工事の区分を確認する
- ビル指定業者の有無を確認する
- 施工会社へ現地調査を依頼する
- 見積書の工事項目と内訳を確認する
- 追加費用が発生する条件を確認する
- 工事日程と引き渡し期限を確認する
- 管理会社へ工事申請書や作業届を提出する
- 什器や備品の搬出日を調整する
- 原状回復工事を開始する
見積もりを確認する際は、工事開始から完了までの日程だけでなく、管理会社の完了確認や、手直しに必要な期間も考慮しましょう。
引き渡し期限の直前ではなく、余裕を持って施工会社へ相談することが重要です。
まとめ
原状回復工事の見積もりでは、合計金額だけでなく、工事範囲や内訳を確認することが重要です。
内装解体、床・壁・天井の補修、設備撤去、養生、搬出、廃材処分、清掃、夜間・休日施工など、必要な項目が含まれているかを確認しましょう。
また、オフィスビルや商業施設では、B工事や指定業者による施工が必要になる場合があります。
見積もりを依頼する前に、管理会社やオーナーへ工事区分を確認し、テナント側で施工会社を選べる工事と、指定業者へ依頼する工事を整理することが大切です。
複数の見積もりを比較する際は、金額だけで判断せず、工事範囲、追加費用の条件、工程、施工会社の対応範囲まで確認しましょう。
Jテクノでは、オフィスや店舗の原状回復工事をはじめ、内装解体、スケルトン返し、設備撤去、B工事、ビル管理会社との調整など、幅広く対応しています。
原状回復工事の見積もりや施工会社選びでお困りの方は、お気軽にご相談ください。
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