百貨店やショッピングモールなどの商業施設から退去する際には、契約内容に基づいて、店舗区画を元の状態へ戻す原状回復工事が必要になります。
しかし、商業施設の原状回復工事は、一般的なオフィスの工事と比べて、確認事項が多くなる傾向があります。
営業時間中の作業が難しい施設では、夜間や休館日に工事を行う必要があります。
また、搬出入の時間帯、使用できるエレベーター、共用部の養生方法、指定業者の有無などについて、施設側と細かく調整しなければなりません。
飲食店、物販店舗、美容室、クリニックなど、店舗の用途によって必要な工事内容も異なります。
この記事では、百貨店・商業施設の原状回復工事について、一般オフィスとの違いや、工事を進める際に確認しておきたいポイントを分かりやすく解説します。
百貨店・商業施設の原状回復工事とは
百貨店・商業施設の原状回復工事とは、テナントの退去時に、入居後に設置した内装や設備を撤去し、契約内容に基づいて店舗区画を元の状態へ戻す工事です。
例えば、店舗の間仕切り壁、什器、カウンター、照明、看板、電気配線などを撤去し、床、壁、天井を補修します。
店舗の用途によっては、給排水設備、厨房設備、換気設備、ダクトなどの撤去も必要になります。
また、契約内容によっては、内装や設備を撤去し、建物の構造部分が見える状態まで戻す「スケルトン返し」が求められる場合もあります。
主な工事内容は、以下のとおりです。
- ・内装解体工事
- ・間仕切り壁・パーティションの撤去
- ・造作家具・什器・カウンターの撤去
- ・床材・壁材・天井材の撤去や補修
- ・照明器具・電気配線の撤去や復旧
- ・空調設備・換気設備の撤去や復旧
- ・給排水設備の撤去や復旧
- ・厨房設備・ダクトの撤去
- ・看板・サイン・店名表示の撤去
- ・廃材の搬出・処分
- ・工事完了後の清掃
必要な工事範囲は、施設や賃貸借契約によって異なります。
工事を始める前に、施設の管理会社や運営会社へ確認することが重要です。
一般オフィスとの違い
一般オフィスと百貨店・商業施設では、原状回復工事の基本的な考え方は共通しています。
どちらも、契約内容に基づいて、入居中に変更した内装や設備を元の状態へ戻す工事です。
一方で、百貨店・商業施設では、来店客や他のテナントへの影響を抑えるために、より細かな調整が必要になることがあります。
主な違いは、以下のとおりです。
- ・営業時間中に作業できない場合がある
- ・夜間や休館日の施工が必要になる場合がある
- ・搬出入の時間帯が細かく定められている場合がある
- ・使用できる搬入口やエレベーターが指定される場合がある
- ・共用部の養生方法が定められている場合がある
- ・施設指定業者へ依頼する工事が多い場合がある
- ・消防設備や防災設備に関する確認が必要になる場合がある
- ・工事申請や作業届の提出が必要になる場合がある
- ・騒音、振動、粉じん、臭いへの対策が求められる
- ・施設側の完了確認を受ける必要がある
一般オフィスよりも、施設側との調整に時間がかかる場合があります。
退去日が決まってから慌てて準備するのではなく、早めに施工会社へ相談しましょう。
主な工事内容
百貨店・商業施設の原状回復工事では、テナントの用途によって、必要な作業が大きく変わります。
物販店舗では、什器、陳列棚、レジカウンター、照明、看板などの撤去が中心になります。
一方、飲食店では、厨房設備、給排水設備、換気設備、ダクトなどの撤去が必要になる場合があります。
店舗の用途ごとに、主な工事内容を整理すると、以下のようになります。
物販店舗
- ・陳列棚・什器の撤去
- ・レジカウンターの撤去
- ・造作壁・間仕切り壁の撤去
- ・照明器具・電気配線の撤去
- ・看板・サインの撤去
- ・床・壁・天井の補修
飲食店
- ・厨房機器の撤去
- ・給排水設備の撤去や復旧
- ・換気設備・ダクトの撤去
- ・カウンター・客席造作の撤去
- ・グリストラップなどの確認
- ・床・壁・天井の撤去や補修
美容室・サロン
- ・シャンプー台・施術設備の撤去
- ・給排水配管の撤去や復旧
- ・造作家具・鏡・照明の撤去
- ・間仕切り壁の撤去
- ・床・壁・天井の補修
クリニック・サービス店舗
- ・受付カウンター・造作家具の撤去
- ・間仕切り壁の撤去
- ・電気設備・通信配線の撤去
- ・給排水設備の撤去や復旧
- ・看板・サインの撤去
- ・床・壁・天井の補修
同じ商業施設内であっても、店舗の用途や契約内容によって、必要な工事範囲は異なります。
現地調査を行い、施設側と工事範囲を確認したうえで、見積もりを作成することが重要です。
商業施設特有のルール
百貨店や商業施設では、営業中の来店客や他のテナントへ影響を与えないように、工事に関するルールが定められている場合があります。
施工会社へ依頼する前に、施設の管理会社や運営会社へ確認しましょう。
主に確認しておきたい項目は、以下のとおりです。
- ・作業可能な曜日や時間帯
- ・夜間作業や休館日作業の可否
- ・騒音や振動が発生する作業の時間帯
- ・使用できる搬入口
- ・搬出入車両のサイズや台数
- ・搬出入車両の待機場所
- ・使用できるエレベーター
- ・共用部の養生範囲
- ・廃材や資材の一時保管場所
- ・粉じんや臭いへの対策
- ・火気を使用する場合の申請
- ・作業員の入館手続き
- ・工事申請書や作業届の提出期限
施設によっては、作業員名簿、工程表、搬出入計画書、養生計画書などの提出を求められる場合があります。
工事申請の承認に時間がかかることもあるため、早めに準備を進めましょう。
指定業者・B工事の確認も重要
百貨店や商業施設では、工事内容によって、施設指定業者へ依頼する必要がある場合があります。
特に、建物全体の安全性や設備管理に関わる工事では、テナント側で自由に施工会社を選べないことがあります。
このような工事は、B工事として扱われる場合があります。
B工事とは、一般的に、テナント側が費用を負担し、オーナーや施設側が指定する施工会社へ依頼する工事です。
例えば、以下のような工事が、B工事として扱われることがあります。
- ・電気設備工事
- ・空調設備工事
- ・換気設備工事
- ・給排水設備工事
- ・防災設備工事
- ・火災報知器の移設・復旧
- ・スプリンクラー設備の移設・復旧
- ・共用部と接続する設備の撤去や復旧
ただし、B工事の範囲は、施設ごとに異なります。
工事を依頼する前に、施設側へ工事区分表の有無を確認し、指定業者へ依頼する工事と、テナント側で施工会社を選べる工事を整理しましょう。
消防設備・法令対応で注意すべきこと
百貨店や商業施設には、多くの来店客やスタッフが出入りします。
そのため、原状回復工事を行う際は、消防設備、避難経路、防火区画などへ影響がないかを確認することが重要です。
特に、以下のような設備や項目を確認しましょう。
- ・火災感知器
- ・スプリンクラー設備
- ・誘導灯
- ・非常用照明
- ・消火器
- ・非常放送設備
- ・排煙設備
- ・防火扉・防火シャッター
- ・避難経路
- ・防火区画
間仕切り壁や天井の撤去、設備の移設などによって、消防設備の配置や機能へ影響する場合があります。
また、火気を使用する工事や、消防設備に関わる工事では、施設側への申請や、専門業者による施工が必要になることがあります。
必要な手続きは、建物の用途、規模、所在地、工事内容によって異なります。
工事を始める前に、施設の管理会社や施工会社と相談し、必要に応じて管轄消防署へ確認しましょう。
退去から引き渡しまでの流れ
百貨店・商業施設の原状回復工事は、一般的に以下のような流れで進めます。
- 賃貸借契約書や特約事項を確認する
- 施設の管理会社や運営会社へ退去を連絡する
- 原状回復工事の範囲を確認する
- スケルトン返しが必要か確認する
- A工事・B工事・C工事の区分を確認する
- 施設指定業者の有無を確認する
- 施工会社へ現地調査を依頼する
- 見積もりと工程表を確認する
- 施設側へ工事申請書や作業届を提出する
- 搬出入の時間帯や経路を調整する
- 什器や備品を搬出する
- 原状回復工事を実施する
- 必要に応じて設備の確認や検査を受ける
- 施設側の完了確認を受ける
- 必要に応じて手直しを行う
- 鍵や入館証を返却し、引き渡す
商業施設では、施設側の承認や指定業者との調整に時間がかかる場合があります。
また、作業可能な時間帯が限られると、工事日数が増えることもあります。
引き渡し期限の直前ではなく、余裕を持って準備を進めましょう。
トラブルを防ぐためのポイント
百貨店・商業施設の原状回復工事では、一般オフィスよりも多くの関係者との調整が必要になる場合があります。
工事をスムーズに進めるために、以下の点に注意しましょう。
1.施設側へ早めに確認する
退去日が決まったら、原状回復工事の範囲、指定業者の有無、工事申請の期限、搬出入ルールなどを早めに確認しましょう。
確認が遅れると、希望する日程で工事を始められない場合があります。
2.工事区分を整理する
商業施設では、施設指定業者へ依頼する工事と、テナント側で施工会社を選べる工事が混在することがあります。
見積もりを依頼する前に、A工事、B工事、C工事の区分を確認しましょう。
3.夜間・休日施工を想定する
営業時間中に工事ができない場合は、夜間や休館日の作業が必要になります。
工事可能な時間帯を確認し、必要な日数や費用を見積もりに反映させましょう。
4.搬出入の条件を確認する
店舗什器、設備、廃材などを搬出する際は、使用できる搬入口、エレベーター、作業時間などを確認しましょう。
大型什器や重量物がある場合は、事前の搬出計画が重要です。
5.消防設備への影響を確認する
間仕切り壁、天井、電気設備、空調設備などを変更する場合は、消防設備や避難経路への影響を確認しましょう。
必要に応じて、施設側、指定業者、管轄消防署へ相談することが重要です。
まとめ
百貨店・商業施設の原状回復工事では、契約内容に基づいて、店舗区画の内装や設備を元の状態へ戻します。
一般オフィスとの大きな違いは、営業時間、搬出入、共用部の養生、指定業者、工事申請、消防設備などについて、施設側との細かな調整が必要になる場合があることです。
また、飲食店、美容室、物販店舗など、店舗の用途によっても必要な工事内容は異なります。
退去日が決まってから慌てて準備するのではなく、早めに施設側へ確認し、現地調査や見積もりを進めることが重要です。
Jテクノでは、百貨店や商業施設のテナント原状回復工事をはじめ、内装解体、スケルトン返し、設備撤去、B工事、施設管理会社との調整など、幅広く対応しています。
百貨店・商業施設の原状回復工事をご検討中の方は、お気軽にご相談ください。
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